ICLとは

ICLとレーシックの違いや、よくある質問など

角膜を削らない視力矯正

眼内コンタクトレンズ=ICL(Implantable Collamer Lens)は、レーシック(LASIK:laser in situ keratomileusis)が最初に報告された1990年より以前の1980年代に開発が行われた、実は歴史のある手術法です。国内では当会代表の清水が1997年に初めて導入し、2002年の臨床治験を経て2010年に厚生労働省の承認をうけました。

しかし、従来のICLは房水循環(目の中の水の流れ)が悪くなることから、約1~2%白内障が進行するというリスクがありました。この合併症をなくすべく清水は、レンズの中央に極小の穴をあけた Hole ICL KS-AquaPORT を考案・開発し、2007年に世界で最初の移植を行いました。その後、このHole ICLは房水循環が改善されたことから白内障のリスクが低下し、現在世界75か国以上で承認されています。2025年の前期において、総計300万枚以上が移植され、世界的スタンダードとなっています。

メリットは、術後の結果に不満や合併症があれば、レンズを取り出し元の状態に戻すことができること、幅広い度数に対応できることです。レーシックでは、近視度数が強い場合、角膜をたくさん削る必要があり、手術の難易度が高くなります。その結果、術後誤差が大きくなり、近視が再発したり、ドライアイの原因になったりすることがありました。また、一度削った角膜は元にもどすことはできません。ICLは度数が強くても軽くても、一枚のレンズを目に入れる同じ手術方法のため、難易度に差が生じることはありません。また、将来白内障になっても従来同様の白内障手術を行うことができます。

ICLのメリットレーシックとの違いと利点

その他手術との比較各手術の利点や欠点

レーシック 眼内コンタクトレンズ挿入術(ICL)
方法 エキシマレーザーを使ってフラップ(角膜の1部を
ふたのように切り取ったもの)を作成し、角膜にレーザーを照射して
取り、視力を矯正
角膜は3mmの切開のみで眼内コンタクトレンズを移植する侵襲が小さい手術
利点 ・比較的費用が安い ・フラップトラブルがない
・ドライアイが起きにくい
・強度の近視でも見え方が良好
・近視のリバウンドが少ない
・移植したレンズは取り出し可能(可逆性がある)
欠点 ・フラップトラブルが起こる可能性
・ドライアイになりやすい
・近視のリバウンドが起こる可能性
・不可逆的な手術で角膜を元に戻すことができない
・白内障になったとき正確な手術が受けれない可能性
・夜間に視力が低下
・費用が高め

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ICLの手術は短時間手術の所要時間と流れについて

点眼麻酔で痛みはほとんどなく※、片目、約10分程度(基本的には両眼同日手術)の日帰り手術です。手術が終わった直後から、ある程度見えています。数時間休むとだいぶ見えてきますが、当日は70%くらいの見え方で、手術当日に裸眼でお帰りいただくことができます。一日経つと、90~100%くらいの見え方になり、概ねデスクワークは可能です。基本的に傷口は3mm程で縫合することなく、自然治癒します。※感じ方には個人差があります。

手術の流れ

  • 点滴麻酔の図

    1. 点滴麻酔をして、角膜を約3mm切開します。

  • 点滴麻酔の図

    2. 切開した部分からレンズを眼の中に挿入します。

  • 点滴麻酔の図

    3. 虹彩と水晶体の間にレンズをはめます。

よくある質問

  • レンズはどんな素材でできていますか?

    レンズの素材は、コラマーという特殊な合材で無色透明な紫外線をカットする効果を持っており、ソフト
    コンタクトレンズのように水分の含んだ柔らかな素材でできています。これまでプロスポーツ選手の方にもご愛用いただいていますが、目をぶつけても目の中でレンズが破損することはありません。

  • 年齢制限はありますか?

    基本的には21歳~50歳くらいまでが適応ですが、老視対策を考慮した度数合わせで良好な場合は50歳~55歳くらいまで適応となる場合があります。

  • 術後どのくらいで視力は安定しますか?

    通常翌日には回復しますが、まれに完全に安定するまで数日かかることがあります。

  • レンズの中央に穴?

    見え方に影響を及ぼさない0.36mmの貫通孔がレンズの中央にあいています。これによって眼の中の水流の循環が維持され、眼内の状態を健全に保つことができます。当研究会世話人の清水等が北里大学で開発しました。

  • 費用は公的医療保険の対象ですか?

    公的医療保険の対象ではありません。民間保険の給付条件によって対象となる場合がありますので、ご加入の保険会社に「有水晶体眼内レンズ挿入手術」が対象かどうかをお問い合わせください。

  • どのくらいの視力まで手術できますか?

    0.01の視力の人も手術できます。詳細は医師にお尋ねください。

  • 術後の不具合や合併症がおきることはありますか?

    ハロー・グレア:時に夜間の光がにじんで見えたり、まぶしく感じます。ほとんどの方が数か月で解消します。
    レンズの回転:乱視用のレンズで稀に起こります。
    稀に視力が完全に安定するまでに約1週間かかることがあります。起こりうる合併症については、患者様それぞれに医師より詳しく説明します。

  • 治療を受ける制限はありますか?

    目の形や病気、全身疾患などによって治療の対象とならない場合があります。事前に詳しい検査を行い、目の形、状態、生活習慣などを総合的に検討して治療が可能かを専門の医師が診断を致します。また正確な検査のためにコンタクトレンズ(特にハードレンズ)は一定の期間装用を中止していただく必要があります。妊娠中、授乳中は視力が不安定になることがあり近視矯正手術はできません。

  • 眼内コンタクトレンズを入れていることは他人に気が付かれますか?

    虹彩の後ろに挿入するので、外からは見えません。

  • 老眼も治りますか?

    40歳頃から加齢に伴う調節力の衰えにより「手元が見にくい」と言った老眼の症状が出始めます。老眼は遠近のピントを合わせる能力が衰える症状です。眼内コンタクトレンズ治療は近視や乱視など屈折の矯正を行いますが、老眼の治療ではありません。老眼により手元が見にくい場合は近用眼鏡(老眼鏡)等を適宜使用して下さい。

Collamer®(コラマー)について

コラーゲンを含むHEMA(ヒドロキシエチルメタクリレート)の共重合体で、とても軟らかい素材です。

親水性であるCollamer®の特徴としては、多くの眼内レンズ(白内障手術時に使用される)で使われております疎水性Acrylicと比べても屈折率が低いために光の反射が最小限に抑えられ、グレア・ハローの可能性を低下させます。Collamer®は親水性であるため、下図のようにレンズ中心部分(図の左側)からレンズの周辺部分(図の右側)にかけての含水率が変化しており、それに伴って屈折率が変化すると言われています。
ご承知の方も多いと思われますが、光の特性として光を大きく曲げる(屈折率が高い)ことは反射率を高めることとなり、周辺部が水に近い屈折率となっていくことでグレア・ハローの原因となり得るレンズ表面の反射を軽減します。

Collamer®はコラーゲンを含むため、そのユニークな特性により、炎症、フレア、細胞反応が最小限に抑えられます。
紫外線を吸収する成分(発色団)が共重合体に結合されており、紫外線をカットする効果があります。

INTERVIEW

ICLを受けた眼科医にお話を伺いました(第6弾)

こうの眼科クリニック河野 雄亮先生

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