ICLを受けた眼科医にお話を伺いました(第1弾)

インタビュー | 2018.06.05

近年、新しい屈折矯正手術として静かなブームとなってきている「ICL(眼内コンタクトレンズ)」。栃木県小山市の「もりや眼科」院長 森谷充雄 先生は、これまで多くの白内障手術やICL手術を行ってきておられますが、自らもICL手術を受けられた眼科医としても有名な先生です。このたびICLについて森谷先生に伺ってきたお話をご紹介致します。なお森谷院長先生のブログも是非ご覧下さい(http://www.moriyaganka.com/blog/)。

Q1.森谷先生がICL手術を受けたきっかけを教えて頂けますか。

A1.7年ほど前にレーシックを行っている施設に勤務していたので、一度レーシックを受けようか検討したことがあります。実際に検査を受けたところ、私の目は近視も乱視も強くてレーシックに不向きだったこと、眼底検査で網膜裂孔が見つかったのでレーシックはかなわず、代わりに網膜剥離を予防するレーザー治療を受けました。5年ほど前から私はジョギングを始めたのですが、東京にいる眼科の先生と切磋琢磨するようになり、その先生が2年ほど前にレーシックをして随分快適そうな生活をしているようでした。その頃に現在のHole ICLが出てきて、とても治療成績が良くて患者さんに喜ばれるという話を聞くようになり、別のマラソン仲間の眼科医にICL手術について相談したところ、快く引き受けてくれました。100キロマラソンのような超長距離レースになると、眼鏡の曇りが気になっていましたが、手術の半年後にUTMB(モンブランを走る山岳レース)や、スパルタスロン(ギリシャの超長距離レース)に出る予定だったので、そこで眼鏡がないと快適だろうなと考えたのがICL手術を受けるきっかけでしたね。

Q2.「ICLを用いる屈折矯正手術」とは、どんなものか教えて下さい。

A2.簡単に言えば「レンズを目の中に入れて、近視や乱視などを矯正する治療」で、眼内コンタクトレンズとも言われています。このような屈折矯正手術用のレンズは有水晶体眼内レンズと呼ばれ、様々な製品が存在していますが、当院で使用しているICLは、日本では唯一、厚生労働省により医療機器としての承認を得ている有水晶体眼内レンズです。ICLは生体適合性の高い軟らかい素材で作られており、専用のインジェクターで折り畳んで約3mmの切開創から目の中へ挿入します。ICLは茶目(虹彩)の後ろ側と水晶体の前面の間に設置しますので外から見ても分かりません。ICLは半永久的にお手入れが不要です。

Q3.ICLが適応とされる患者さんはどのような方でしょうか。

A3.ICLやレーシックなどの屈折矯正手術は、原則的に「21歳以上で屈折が安定している方」が対象となりますので、まず眼科専門医に受診して頂く必要があります。屈折矯正手術としてみなさんが良くご存知のレーシックは、「黒目(角膜)を削って」近視や乱視を矯正しますので、矯正量に限界があります。つまり一定以上の強度近視や乱視を矯正することができませんし、また角膜が薄い患者さんには適応しません。一方、ICLでは「レンズを足す」ことにより矯正しますので、矯正量の限界がほぼありませんし、角膜が薄くレーシックが不適応とされる患者さんにも用いることが可能です。

Q4.レーシックと比べてICLのメリットは他にもあると聞きましたが、どのようなことでしょうか。

A4.先ほども言いましたように、ICLでは強度の屈折異常の患者さんや角膜の薄い方にも幅広く対応できることの他、レーシックで時に発生する「屈折の戻り」がありません。レーシックでは削った角膜の創傷治癒や角膜構造の強度変化によって、術後に屈折変化が生じることがあるわけですが、ICLでは角膜を削らないのでそのようなことは起こりません。またICLでは「元に戻せる」ことも大きなメリットです。ICLを挿入した後、仮に度数やサイズの変更が必要な場合でも、入れ替えることができますし、万一、他の病気によってICLを取り出さないとならない時でも、容易に対応できます。こ他、角膜を削らないICL手術では角膜知覚の低下が起こりにくいため、レーシックより術後のドライアイ発症は非常に少ないと思います。

Q5.ICLの手術はどのような流れで行われるのでしょうか。

A5.手術は点眼麻酔といって、目薬で麻酔を行います。目薬ですので麻酔の痛みは全くありません。目の表面や周りを消毒した後、黒目(角膜)の周辺部に1mm位の切開から粘弾性物質という透明なゼリー状の薬剤を注入します。これによって目の中の組織を保護するとともに、手術操作を行う空間を確保します。続いて同じように3mmの切開を作り、この切開創から専用インジェクターによって折り畳まれたICLを目の中へ挿入します。挿入後、ICLを茶目(虹彩)の後面へ設置し、粘弾性物質を吸引除去して手術は終了です。手術自体の時間は片眼で約10分間程度で、院内でしばらく休んで頂いた後、検査をして問題がなければそのまま帰宅頂く「日帰り手術」です。術後は医師の指示にしたがい、薬の服用や点眼を行い、定期的な検査を受けて頂きます。

Q6.手術の最中や術後は痛くありませんか。

A6.ICL手術は点眼麻酔で行いますので、術中の痛みは全くありません。私のブログにも書きましたが、ICLを挿入する際には「目を押される」という独特の感覚を私も感じましたが、痛くはありませんでした。なお術直後から数日は異物感や充血、かすみなどを自覚されることがありますが、手術の創口が治癒して炎症が治まっていくことで、時間とともに自然に改善します。

Q7.ICL手術のリスクはどのようなことがありますか。

A7.ICL手術は白内障手術と同じように、目の中へ器具を入れたりレンズの挿入を行う「内眼手術」ですので、最大のリスクは術中・術後の感染症です。このため手術時の術野の消毒や器具の滅菌には充分な留意を払っています。また術後、特に手術直後は患者さまには担当医の指示にしたがって生活して頂く必要があります(洗髪・洗顔、シャワー・入浴、化粧・アイメイク、飲酒・たばこ、自動車の運転、運動、プールなど)。詳しくは当院のホームページをご覧下さい。なお、おかげさまで当院ではこれまで感染症の発生はありません。

Q8.レーシックで時に言われている「ハロー」、「グレア」は、ICLではどうでしょうか。

A8.当院で使用しているICLは中央に孔の開いているHole ICLです。この孔によって緑内障などの合併症を予防しているのですが、状況次第で孔を感じてしまうことがあります。日中には感じることはないのですが、夜間に対向車の光を浴びると光の輪が出てきます。また劇場のような強い差し込む光がある場所だとこの光輪を感じやすいです。ただ、それで生活が不自由になったり、車の運転が難しくなるというほどではありません。ある程度、時間と共に慣れてきます。個人的には全体的な見え方の質は非常に満足しています。

Q9.ICLの手術費用はどれくらいかかりますか。

A9.ICL手術は「自由診療」です。厚生労働省に認可された治療法ですが、レーシックと同様に健康保険は適用されません。ただし保険会社によりますが医療保険が適用される場合がありますので、医療保険に加入されている方は保険会社にお問い合わせ下さい。ちなみに当院では手術費用(両眼・税込み)で、乱視なし:59万8千円、乱視あり:64万8千円です。上記費用は手術費用、レンズ代金、術前・術後6ヶ月までの検査・診察・投薬を含めた総額です。手術申し込み時にお支払いいただきます。

Q10.最後に屈折矯正手術を検討されている方々にアドバイスをお願いします。

A10.ICL手術を受ける方は、事前に私が何も説明しなくても「全部、分かっている」という方もいらっしゃるくらい良く調べている方が多いです。逆に言うと、それだけ手術を受けるのに不安が大きいからこそ色々調べていらっしゃるのだと思います。屈折矯正手術は健康な人に対する手術ですから、患者さんに安心して手術を受けて頂けるよう安全性を充分に確保して臨んでいます。ただ「手術」ですのでリスクはゼロでないということも充分ご理解して頂きたいと思います。私の場合は、マラソンの大会に向けて眼鏡を外したいという明確な理由があってICL手術を受ける決心がつきました。ある程度思い切ったほうが、手術を受けやすいのかもしれません。私はICL手術を受けて単純に眼鏡が外れただけでなく、今まで眼鏡を掛けていてどれだけ不自由をしていたのかが良く分かりました。近視は病気ではないとされているのですが、実際にはある程度のハンディーキャップを背負っているのと同様なのかもしれません。ほんの僅かですが全体的に若干大きく見えるようになって、手術用顕微鏡の倍率が変わったのかな?と思いました。当院でICL手術を実施しているのは、私と同じようにICL手術で一人でも多くの人に喜んで貰いたいと思っているからです。私のブログに体験記を載せましたので、是非ご参考にして下さい。

因みに、私が参加したレースの動画も良かったら見て下さい

https://www.facebook.com/moriyaganka/videos/1449083718514355/

お忙しいところ、貴重なお話をありがとうございました。

2018年4月24日インタビュー

もりや眼科森谷 充雄 先生

防衛医科大学校卒業
筑波大学附属病院眼科 入局
桜川市 県西総合病院眼科 勤務
宮崎県 宮田眼科病院 勤務
筑波大学附属病院眼科 勤務
もりや眼科 開設
【資格・所属など】
日本眼科学会専門医
日本眼科学会 会員
日本眼科手術学会 会員
日本白内障学会 会員
日本網膜硝子体学会 会員
アメリカ眼科学会 会員
眼科PDT講習会 修了
A型ボツリヌス毒素製剤講習 修了

もりや眼科